カウンセリング(counseling)とは、依頼者の抱える問題・悩みなどに対し、専門的な知識や技術を用いて行われる相談援助のことです
。 カウンセリングを行う者
をカウンセラー(counselor)、相談員などと呼び、カウンセリングを受ける者
をクライアント(client)、カウンセリー(counselee)、来談者などと呼びます
。 広義のカウンセリングは、社会・経済・生活の各分野における種々の専門的相談援助行為を指し、例えば、美容関連、就職関連、法律関連、ローンクレジット関連、婚姻関連、他、様々なものが含まれます
。 一方、狭義のカウンセリングは、精神心理的な相談援助、いわゆる心理カウンセリングを指します
。 その場合、心理カウンセラーの専門的学問的基盤は、心理学・応用心理学の一分野である臨床心理学が用いられることが多いです
。 アドバイスとは異なり、カウンセラーから明確な対応策や解決策を直ちに提示することは原則的にありません
。 これは、カウンセリングが終結した後には、クライアントが主体的に問題や悩みに相対していけるよう、カウンセリングを通じてクライアントが新しい発見や洞察に辿り着くことを目的の1つとしているためであり、心理カウンセリングの際は、大切にされる原則です
。 しかしながら、抱える問題の性質やクライアントを取り巻く現状、あるいは病状・病態によっては、この限りではありません
。 無論、診察や診断などの行為は医師のみに許される行為でありますが、本来、カウンセラーは、上述のように専門的知識や臨床心理学を修めているはずであり、自身の持つ学問的基盤に基づき、クライアントの状態を査定し、その都度、状況を判断することが心理カウンセラーに求められる重要な専門性の1つです
。 メンタルケア先進国である欧米諸国に比べ、日本においては、制度面の遅れがあり、それ故、これまでは心理カウンセリングや心理療法が日常的なものとして位置づけられてきませんでした
。 しかし、昭和期や20世紀に比しての、精神疾患受療率増加、自殺者数増加、不登校児童生徒数増加、労働契約法施行による労働者の心身両面への安全配慮義務拡大などの様々な社会情勢から、神経科医・心療内科・臨床心理士などとの心理カウンセリングや心理療法のため、専門家相談機関を訪れる人は増加傾向にあります
。 また、教育機関においては、文部科学省によるスクールカウンセラー事業が定着するなど、今日では心理カウンセリングや心理療法が我々の日常に際したものとして認知されてきています
。 日本では、心理士、心理カウンセラー(相談員)、心理セラピスト(療法士)などの心理職には国家資格が存在しない一方、民間の心理学関連資格は多数存在します
。 そのような現状から鑑み、高度な専門養成課程を敷き、スクールカウンセラー事業を始め、支援活動の実績がある臨床心理士、医療・保健・福祉分野に活動領域を限定する方針で、医師関連団体が提案する医療心理師(仮称)を中心に、心理職の国家資格を創設しようとする動きがあり、現在も協議が重ねられています
。 一方、上述のように臨床心理士などの心理職に限らず、「カウンセラー」という言葉は、多分野で用いられるものであるため、称することは業種・職種を問わず可能です
。 これは種々の専門家や分析家、または技術者を分類せず、「○○コンサルタント」、「○○アナリスト」、「○○エンジニア」と形容するのと同様です
。 しかしながら、そもそも心理カウンセラーなどの心理職が扱う「心」「心理」「精神」とは、対象者の生命・身体・人生・生活の根幹に関わるものであるため、高い専門性は元より厳しい倫理観も要求されます
。 そのため、そのような資質の裏付けとなる資格は、教育や任用に当たり大学・大学院、中央省庁、公的機関などが関わることでの公益性の担保、一定水準の認定試験の実施、現場での臨床実務訓練をこなした者に限る認定試験受験許可、教育機関と連携したカリキュラムの整備、などの体制を敷き専門性と倫理観を養成しています
。 資格の有無・種類だけでなく、学位の取得による専門性の裏付けや、学会への所属による学術的な自己研鑽の傾向も、カウンセラーの能力や資質を判断する手がかりとなりますが、海外のニセ学位を金銭で購入したり、いわゆる自称学会に名目上のみ所属したりという悪質なカウンセラーも散見されます
。 これは、「学位商法(ディプロマミル/ディグリーミル)」の存在や、「学会」を名乗ることへの法的規制がないことが影響しています
。 ただし、国内の大学院は全て文部科学省からの認可を受ける必要があるため、これにより国内の正規学位授与の実態は当局が把握しています
。(大学等の設置認可・届け出制度) 特に博士号については、当該学位請求論文である博士論文は、全て国立国会図書館が所蔵していています
。(国内博士論文) 海外の学位であったとしても、例えばアメリカにおける正規学位であれば、「アクレディテーション」と呼ばれる認定校制度の下、当局からの認定を受けた大学院のみが授与できます
。 したがって、そうではない「非認定大学リスト」と照合すれば、当該学位が認定大学院から授与された正規学位であるか否かは直ちに判明します
。 なお、国内の学位よりも海外の学位の方が価値が高いなどということはありません
。 一般に、海外の学位は、外国語で執筆した論文により取得したため価値が高いのではと考える方がいますが、学位は語学能力ではなく、研究自体の評価として授与されるものです
。 また、学会に関しては、自称学会ではなく、学術研究活動を主たる目的とするなどの一定の要件を満たす公的学会の場合は、政府諮問機関である日本学術会議から「日本学術会議協力学術研究団体」として指定を受けているはずです
。 ついては、依頼希望者側からも、上記のように、資格の有無・種類、学位、学会などを含めて、慎重に吟味し、信用のおける背景を持った「カウンセラー」を選ぶことが肝要であり、利用や活用の際には注意を要するべきです
。 対比される概念として、心理療法があります
。 心理カウンセリングが精神心理的な相談援助そのものを指すのに対し、心理療法は、その相談援助を通じ、クライエントが抱える種々の精神疾患や心身症、精神心理的問題・不適応行動、精神心理的状況に良好な変容をもたらすことを図ることを目的とする専門的な理論と技法の体系を指します
。 したがって心理カウンセリングは、心理療法を含むものと考えることができます
。 精神療法、心理セラピー、とも呼ばれます
。 心理コンサルテーションとして、心理カウンセリングが自発的な理解や洞察への到達を目的の1つとしているのに対して、心理コンサルテーションは具体的な対応策・解決策、考察を提示するものです
。 対象とされるのは、クライアント個人で、クライエントをサポートするコミュニティにおける、クライアントにとってのキーパーソンである場合も多いです
。 ただし、対応策、解決策、考察を提示するのは、あくまでも専門的見解の一端を示すためであり、それらに基づく対応を強要するためではありません
。 心理職が示す専門的見解を通じ、相対する問題への理解を深め、共通理解の下での効果的な対応を目指すためのものです
。 心理コンサルティングとも呼ばれます
。 メンタリングとして、心理カウンセリングが自発的な理解獲得や洞察への到達を目的の1つとしている点と、メンタリングが自発的な成長・発達を促す点は両者の類似するところです
。 一方、取り扱う題材は、心理カウンセリングが精神疾患、心身症、精神心理的問題・不適応行動の援助・解決・予防、あるいは人々の精神的健康の保持・増進・教育と多岐に渡るのに対し、メンタリングは人材育成の分野に特化しています
。 したがって、メンタリングはキャリア開発の文脈で用いられることが多いです
。 また、心理カウンセリングにおける相談援助は、専門的知識、技術、学問的基盤によるものであるのに対し、メンタリングは必ずしもそうとは限らず、日常的・経験的・人間的な相談援助も含まれます
。 コーチングとして、心理カウンセリングとの類似点・相違点はメンタリングとほぼ同様です
。 コーチングもまた、人材育成の分野やキャリア開発の文脈で用いられることが多いです
。 したがって、コーチングとメンタリングは内包する意味合いが重なることが多いですが、コーチングの方がより目標・目的・指向的に用いられることが多く、特定のスキル向上や成果などを目指す場合があります
。 人生相談として、抱える問題・悩みなどに対し相談を行うという性質は似ています
。 しかし、人生相談という言葉の指す範囲が広いため、「相談を受けた側」の者が一般の人間であることが多く、何らかの専門性を有しているとは限りません
。 専門性を有する者への相談であったとしても、心理カウンセリングや心理コンサルテーションのように、一定の原則・目的・形態を伴わないものは人生相談の範疇として区別することがあります
。 また、「相談を受けた側」から「相談を持ちかけた側」へ、日常的・経験的・人間的なアドバイスが行われることが通例です
。 なお、このアドバイスは、「相談を受けた側」の者が自身の半生において感じた主観的教訓であることがあり、「相談を持ちかけた側」が抑鬱傾向などの特定の状態にあるときには、逆にアドバイスにより苦しめることがあることが知られています
。 したがって、独断で性急なアドバイスなどは行わず、精神科医、心療内科医、臨床心理士など、専門家や相談機関に相談する等の配慮が必要です
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